《ヘルマン・ヘッセ全集》全16巻

ヘルマンヘッセ全集日本翻訳出版文化賞受賞

 

ヘルマン・ヘッセ全集全16巻が
第44回日本翻訳出版文化賞を受賞しました

ヘッセを初めて読んだ読者は勿論のこと、ヘッセ愛好家の方々にも大変好評をいただいております。「車輪の下」「ガラス玉遊戯」「荒野の狼」など、誰もが知る永遠の名作から本邦初訳の短編までの全文学作品を、“日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会”が総力をあげて完成させた翻訳により16冊に収録いたしました。新しいヘッセの世界を、ぜひお楽しみ下さい。

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 ・・・詳細はこちらをご覧下さい


四六判上製・平均380ページ・本文2段組
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《完結にあたって》 青島 雅夫 (日本へルマン・ヘッセ友の会・研究会会長)

《推薦のことば》
池内紀小塩節萩尾望都

日本ヘルマン・ヘッセ友の会/研究会が運営するヘッセ情報HP
「Hermann Hesse Page Japan」

 

 

 

ヘッセと猫 第1巻 本体2800円+税(品切)
ISBN978-4-653-03971-6
〈翻訳/執筆:高橋修・山本洋一〉


青春時代の作品 I
二人の兄弟
小さな歌たち
愛の喜びと愛の悩み
凍てついた春
人生の行路
見知らぬ土地
ハンネスとダッデ
人生の歌(愛する母へ)
アデーレに(5篇の詩)
おしゃべりの夕べ
1898年6月14日、父の51歳の誕生日に
サラサーテ
最初期の散文作品
真夜中の彼方一時間
ヘルマン・ラウシャー
麗しのルールーに捧げる花冠
夜曲
第2巻 本体3000円+税(品切)
ISBN978-4-653-03972-3
〈翻訳/執筆:高橋修・橋村良孝〉


青春時代の作品 II
詩人たち
今日はバラがとても強く香る
青い死
上部イタリアの情景描写
ジャスミンの香り
六月の夜
詩人 ―憧れの書
エリーザベトへの手紙
三つのデッサン(アポロウスバシロチョウ・雲・夕べの色彩)
ヴァルテッリーナの赤ワイン
未来の国
ユーリウス・アプデレッグの一度目と二度目の子ども時代
肖像
クヴォールムの物語
四つのスケッチ(マドンナ・修道士・修道士たち・山の湖)
ボッカッチョ
アッシジのフランチェスコ

第3巻  本体3400円+税
ISBN978-4-653-03973-0
〈翻訳/執筆:田中裕・橋村良孝・春山清純・松井勲〉

ペーター・カーメンツィント(1904)

物語集 I(1900-1903)
エルヴィーン
ノヴァーリス
氷の上のナイト
少年時代の体験
行商人
少年の悪戯
グリンデルヴァルト
稀少品
陽気なフィレンツェ人
ビリヤードの話
ヴェンケンホーフ
ペーター・バスティアンの青春

ハンス・アムシュタイン
物語作者
カール・オイゲン・アイゼライン
幼年時代から
大理石材工場
第4巻 本体3000円+税(品切)
ISBN978-4-653-03974-7
〈翻訳/執筆:伊藤貴雄・田中裕・茅野嘉司郎・山川智子・吉岡美佐緒〉

車輪の下(1905)

物語集 II(1904-1905)
昔の〈太陽〉で
ガリバルディ
機械工場から
ソル・アクア(水姉さん)
夜想曲 変ホ長調
ラテン語学校生
アントン・シーフェルバインの東インドへの心ならざる旅
機械工職人
乾草月
ある年老いた独り者の思い出から
都市計画家
ある発明家
ムワムバの思い出
初めてのアバンチュール
第5巻 本体3400円+税
ISBN978-4-653-03975-4
〈翻訳/執筆:磯弘治・岡田朝雄・田中裕・信岡資生〉

物語集 III(1906-1907)
愛の犠牲
恋愛
ある青年の手紙
別れを告げる
ソナタ
ヴァルター・ケンプ
カサノヴァの改心
画家ブラーム
秋の徒歩旅行
小さな町で
ハンス・ディーアラムの見習期間
美しきかな青春
ある文通
古い時代について
ベルトルト
友人たち

 

第6巻 本体3000円+税
ISBN978-4-653-03976-1
〈翻訳/執筆:岡田朝雄・重竹芳江・竹岡健一・橋本裕明〉

物語集 IV(1908-1911)
別れ
技術の驚異
ある詩人の文通から
タエディウム・ウィタエ(生の倦怠)
婚約
ツィーグラーという名の男
帰郷
やすらぎの家―サナトリウムに住むある男の手記―
ラディデル
ヴェリスビューエル
都市
クネルゲ博士の最期
エーミール・コルプ
神父マティーアス
百年前の旅の一日 ―牧歌―
世界改良家
湖の夜
クジャクヤママユ
第7巻 本体3400円+税
ISBN978-4-653-03977-8
〈翻訳/執筆:伊藤寛・宇野将史・岡田朝雄・島途健一・松岡幸司・三浦安子・吉田卓〉


ゲルトルート(1910)

インドから(1913)

物語集 V(1912-1913)
美しい夢
ローベルト・アギオン
いいなずけ
朗読の夕べ
大旋風
プレッセルのあずまや

第8巻 本体3200円+税
ISBN978-4-653-03978-5
〈翻訳/執筆:伊藤寛・岡田朝雄・新宮潔・鈴木直行・松岡幸司〉

ロスハルデ(1914)

クヌルプ(1915)

放浪(1920)

物語集 VI(1914-1918)
森人
ヨーハン・シュヴェルトレの絵本
夢の家
戦争があと二年続いたら
画家
戦争があと五年続いたら
読書狂

第9巻 本体2800円+税(品切)
ISBN978-4-653-03979-2
〈翻訳/執筆:岡田朝雄・川端明子・重竹芳江・田中裕・橋本裕明〉


メールヒェン(1913-1933)
小人
影絵芝居
謎につつまれた山
詩人
笛の夢
アウグストゥス
神々についての夢
別な星の不思議な報せ
ファルドゥム
苦しい道
イーリス
夢から夢へ
ヨーロッパ人
籐椅子の話
国家
売られた土地
友人たちに
魔術師の幼年時代
ピクトールの変身
幽王




(第9巻)(品切)
物語集 VII(1919-1936)
暖炉との対話
内と外
つらい終り
マリオの人生の日々
字を書くコップ
悲劇的
夕方に詩人が見たもの
南国のリゾートタウン
レンボルト あるいはある大酒飲みの一日
夢から覚めて
マッサゲタイ族のもとで
荒野の狼について
ファウスト博士のところでの晩
シュヴァーベンのパロディー
エトムント
パロディー風の掌編
こうした最後の旅

第10巻 本体3200円+税
ISBN978-4-653-03980-8
〈翻訳/執筆:小澤幸夫・六浦英文・吉田卓〉

デーミアン(1919)

戯曲の試み(1907-1920)
ハンスとヘートヴィヒ
放り出された亭主
ビアンカ
駆け落ち
ロメオ
帰郷
新しがりやたちについての対話


第11巻 本体3000円+税
ISBN978-4-653-03981-5
〈翻訳/執筆:図越良平・橋村良孝・山本洋一〉


子どもの心(1920)

クラインとワーグナー(1920)

クリングゾルの最後の夏(1920)

伝説・寓話・たとえ話 (1902-1959)
スコットランドのマーガレット
十二世紀のある絞首刑の話
アントーニオ修道士の死
飛んだ男
ハンネス
恋の哀しみ
恋に陥った若者
インドの王様の伝説
海男
テーベの三つの伝説(野の悪魔・甘いパン・二人の罪びと)
ダニエルと子供
死刑執行
クレムナの包囲
逮捕
冷遇
三本の菩提樹
アッシジの聖フランチェスコの幼年時代
ヤーコプ・ベーメの召命
盲人たちの寓話
跳躍
中国のたとえ話
祖詠
中国の伝説
第12巻 本体3400円+税
ISBN978-4-653-03982-2

〈翻訳/執筆:岡田朝雄・島途健一・高橋修・竹岡健一・田中裕・山口勝・山本洋一〉

シッダールタ(1922)

湯治客(1925)

ニュルンベルクの旅(1927)

物語集VIII(1948-1955)
ノーマル国からの報告
乞食
中断された授業時間
コクマルガラス
小さな煙突掃除屋さん
あるマウルブロン神学校生
 
第13巻 本体2800円+税(品切)
ISBN4-653-03983-6
〈翻訳/執筆:里村和秋・三宅博子〉

荒野の狼(1927)

東方への旅(1932)
 

第14巻 本体3000円+税
ISBN978-4-653-03984-6
〈翻訳/執筆:青島雅夫・岡田朝雄・竹岡健一〉


ナルツィスとゴルトムント(1930)

牧歌
庭でのひととき(1936)
身体の麻痺した少年(1937)
第15巻 本体4000円+税
ISBN978-4-653-03985-3
〈翻訳/執筆:渡辺勝〉


ガラス玉遊戯(1943) 
第16巻  本体3800円+税(品切)
ISBN978-4-653-03986-0
〈翻訳/執筆:島途健一〉


全詩集
 付タイトル索引

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・・・「ヘルマン・ヘッセ全集」完結にあたって・・・

青島 雅夫 (日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会会長 関西学院大学教授)

  明治四十二年(1902)にヘルマン・ヘッセが日本に紹介されてから百年以上になるが、この間にヘッセはドイツの代表的な詩人、作家として日本の読者を魅了し続けてきた。ゲーテの名を挙げられなくてもヘッセの名は挙げられる、という人が多いことは、彼がいかに日本人の気質にあっていたかを示すものでもあろう。爾来ヘッセの作品は、日本では特に若者に愛読されてきた。時には文庫本で、時には全集版で、また時には教科書の中において等である。いずれも若者の、切ない心の代弁者あるいは未来へ希望を抱かせる温かく、静かな指導者としてであった。
 平和な時代にも暗い時代にもヘッセは若者たちに夢と憧れを与え続け、希望の灯となっていた。そのような読者たちに読まれていたのはヘッセの初期、中期の作品であった。しかし時代が下り日本にもヘッセの後期の作品が紹介されるようになり、ヘッセが単に青春ものの作家に留まるものではないことが知られるようになった。有名な個々の作品は既に多く出版されたが、全集は久しく出ていない。
 二十一世紀に入ってすぐ、ヘッセ生誕一二五周年を期してドイツで全20巻という膨大なヘッセ全集が出た。創作作品は半分ほどで、エッセイや評論が約半分を占めている。これはドイツ人にとっても驚きであった。日本へルマン・ヘッセ友の会・研究会は、ヘッセの文学作品の全貌を把握して頂くためにもその大半を翻訳して紹介できないかと願った。幸い臨川書店が出版を引き受けてくださった。田中裕前会長を中心に原案が作られた。第一期として、全16巻でヘッセの代表的作品を網羅し、日本では初訳のものをかなり含むこと、という基本が決まり、やがて編集委員と翻訳作品、担当者が決められていった。
 それから三年、頻繁に校正原稿が送られてくる。一つの作品が複数の編集委員のチェックを経ることになるから、元の原稿とはかなり変わった形になってしまうこともある。或る人が、直されたように変えたら、次の人がまた元のように直して送ってくるような場合もある。臨川書店から送られてくる校正原稿だけでも床から天井にまで達した。その他電子メールが来る。語句や文章の解釈ではかなり激しいやりとりもあった。原稿提出の遅れはどうしても起こりがちだ。すると催促がくる。何度も催促された者もいる。配本順序が変更になる等本当に色々な事もあったが、予定通り最後の巻の発刊までたどり着くことができた。これには読者の方々からの有言、無言の支持と励ましが何と言っても最も強い支えになっていたことであり、心から感謝の意を表する次第である。
 引き続き、第二期としてヘッセのエッセイ・評論集の出版を予定している。原典を縮小してでも、ヘッセの持つもう一つの面を日本の読者に紹介したいと思っている。これは日本では初の試みであり、大方のヘッセ読者の期待に沿えるものと思っている。ご期待頂きたい。

 

・・・「ヘルマン・ヘッセ全集」 推薦のことば・・・

大人の文学  池内 紀 (ドイツ文学者)

 
ヘルマン・ヘッセはわが国には青春文学として紹介された。「青春」といった言葉がまだ意味を失っていなかったころのこと。人は年ごろを迎えるとヘッセを読み、「卒業」のあとは二度と頁を開かなかった。
 いまは教科書に入っている「少年の日の思い出」でヘルマン・ヘッセを知ったという人が多いのではあるまいか。つましい家庭に育った蝶好きの少年が、金持の少年のコレクションからクジャクヤママユを盗む。友人の思い出として語られているが、あきらかにヘッセその人である。
「少年の日の思い出」は訳者が付けたタイトルであって、原語はクジャクヤママユのドイツ名にあたる「夜の孔雀の目」。華麗な孔雀の目のように闇にひろがり誘惑するもの。少年の日に暗い夜がさしかけた一瞬をめぐる物語。
 かつて「青春時代」などと訳されたが、ヘッセ自身は「ヘルマン・ラウシャー」と、そっけなく突き放して名前だけを置いた。さらに「ゲルトルート」「ロスハルデ」「クヌルプ」。それらがいずれも訳者の一存で、甘ったるいタイトルに換えられていた。
 ヘッセにとって文学はサナギが蝶になるための脱皮と成長にひとしく、悪が忍びよる時を見据えて、理性をくらまされない。まさしく大人の文学である。新しい全集によって、ようやく本来のヘルマン・ヘッセがあらわれるにちがいない。


 

真実の人 ヘッセ  小塩 節 (エッセイスト)

 ヘッセは反戦平和主義者として、また戦後は軟弱文士としてドイツではあまり読まれなかった。彼を正当に高く評価したのは、文学の水位の高かった日本と、六〇年代のアメリカで、ドイツへはアメリカから逆輸入された。
 ヘッセの文学にはいつも青春の孤独が語られている。奇をてらうことのいっさいない、自然で素直な文体で青春の悩み悲しみ苦しみ、そして切ない美しさを描いてやまない。ヘッセは自分自身の心の奥底に耳を傾け、そこから聞こえてくるのにだけ従って書いた。書かれた文章はすべて言語による音楽となった。さらに彼の抒情詩は一見伝統的な民謡ふうの語り口で、しかし現代人の心の底からの歌をうたっている。暗い闇を知ったうえでモーツァルトのようにうたう。だから広く長く読まれ続けるのである。
 無名の書店員だった若いヘッセの詩を誰よりも早く認めたのは、「山のあなたの空遠く」の詩人カール・ブッセとリルケだった。ほぼ同じくらい若いリルケは「ヘッセの詩は敬虔の域に近い」とたたえた。
 ヘッセはただの青春もの作家ではない。高齢に達して著した数々の著作も深い滋味に溢れている。まずは此の度の文学作品集十六巻の出版を心からよろこびたい。


ヘッセに帰る  萩尾望都 (漫画家)

 いつも自分が不在のように思われるときには、ヘッセの世界に帰る。
 二〇代、「デミアン」を読んだ。「鳥が卵から出ようとする」というイメージは鮮烈だった。殻が壊れる。新しい世界へ羽ばたく。変化と命。物語の根幹に哲学が重低音を響かせていた。こういう小説の書き方もあるのかと、衝撃だった。
 この作家はどういう人なのだろう。興味を持ち、次々とヘッセを読んでいった。どれも、潤いに満ちた美しい物語だった。悩み、希望、苦しみ、せつなさ、世界との齟齬、孤独、透き通るような愛。私はヘッセを読んで自分の乾きに気づいた。そして、満たされていった。自分は無為の存在だと、もう思わなくても、良いのだ。私はヘッセの世界に抱きしめられた。
 私はヘッセを生んだドイツが好きになった。そのあこがれはいまも、続いている。


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