

和洋古書善本特選目録第13号 和書の部(1)
熊野の本地(異本) 奈良絵巻
室町末期頃写 紙本彩色二十三図 塗函入 一軸 10,500,000円
紙高28.4糎、長サ11米7.4糎。青色紙表紙、見返しは金泥(擦レ有)。題簽、外題、内題ともになし。一部に破レがあるが、裏打補修済。
『熊野の本地』は、本地物(神仏が前生に人間界に生をうけ、人間と同じ苦難を経て衆生を救済する神仏となる物語)の中心的な存在となった御伽草子。天竺摩訶陀国の王の寵愛を受け、王子を身籠った五衰殿の女御は、他の九九九人の后の嫉妬のために山の中で殺される。母の死の直前に生まれた王子は、山の中で成長し、やがて上人に導かれて父王との再会を果たす。父子は上人の力で蘇生した母と共に日本に渡り、熊野の権現として顕れたという物語。
本文は平仮名漢字交じりで、諸本と比較して異同が多く、別系統の異本と考えられる。二十三図ある挿絵は、朱を中心に青や緑など抑えた色調で彩色され、古雅な趣を感じさせる(一部に剥落有)。全体に古体を残した本絵巻は、本文研究のみならず、美術、書誌学の分野でも貴重な史料となりうるもの。