

和洋古書善本特選目録第13号 和書の部(2)
ほうらい山 (絵巻)
奈良絵巻 近世中期写 紙本極彩色十二図 古木函入 二軸 
紙高32.3糎、長サ(上)11米33.2糎、(下)11米27.5糎。一重蔓唐草金襴表紙、見返しは金箔。金色の題簽に「ほうらい山 上(下)」と墨書。函書「蓬莱山 二軸」。本文料紙には金泥で草花等の下絵が描かれ、紙背にも金の切箔を散らした豪華な装丁。函少損・少折レ波・上巻極少虫損補修
祝儀物の御伽草子。不老不死の薬があるという蓬莱山にまつわる伝説を、オムニバス形式で物語る。
本書は「室町時代物語大成第十二」所収の赤木文庫蔵『蓬莱物語(仮題)』と、大部分にわたって概ね大差ない本文をもつ。但し、五ヶ所において赤木文庫本にはみられない本文(10行乃至20行程度)がみうけられる。上巻の第三図の直前に「香菓」という果物についてその味わい、香り高さについて詳しく説いた本文があり、第四図直前に仙人の楽しみについて詳しい描写があるところ、下巻では漢の武帝と西王母のくだりに続けて「東方朔といふ臣下」がらみの挿話があるところなどで、説明や描写がより詳しくなされたり、挿話がつけ加えられた形となっている。これほど大きな異同ではないところでも、幾つかの個所で赤木文庫本に比して表現が詳しくなされる傾向がみとめられる。
挿絵は上巻五図、下巻七図で、すべて本文が散し書きにされて一区切りつけられた後に入り、その前に書かれた内容を忠実に表していることから、正しい位置に入っていると考えられる。繊細な筆致で色鮮やかに華麗に描かれ、人物の着物の模様の細かさ・多様さ、顔色の描きわけ、植物の繊弱微細な描かれようなどが特筆に価する。また、日本の宮殿を描く場合は淡彩色で、中国の宮殿および蓬莱山の宮殿を描く場合は赤、緑、金を基調とした極彩色で彩り、人物の服装や髪型に関しても、和漢の違いが明確に表されている点なども興味深い。天地(霞の部分)には金箔も散らされている。
本文はごく正確に写されており、目移りによる些細な誤脱が二ヶ所にみうけられる程度。全体として質の高い、美しい絵巻といえよう。