

和洋古書善本特選目録第13号 和書の部(3)
大織冠絵巻
奈良絵巻 近世前期写 紙本極彩色十五図 塗函入 三軸 6,930,000円
紙高17.2糎、長サ(上)7米65.6糎、(中)8米52.3糎、(下)7米28.2糎。常磐緑色地牡丹唐草模様の布表紙、見返しは布目地金箔、本文料紙には金泥下絵あり、料紙裏に金箔を散す。各巻表紙に「太しよくわん上(中・下)」の題簽(金紙墨書)あり。各巻に五図ずつ、計十五図の挿絵がある。
「大織冠」は室町後期から江戸初期に流行した幸若舞曲の一つで、近世劇文芸への影響も大きい作品。唐の皇帝の妃となった大織冠(藤原鎌足)の次女紅白女は、無価宝珠などの宝物を興福寺に寄進することを思い立つ。その宝珠を狙う竜王は、唐から日本へ向かう一行に阿修羅の軍勢を差し向ける。万戸将軍の奮戦によってこれを退けた一行だったが、房崎の浦で竜女に宝珠を奪い去られる。鎌足は房崎に下り、海女と契りを交わして竜宮から取り戻すことを頼む。海女は竜に襲われて絶命するが、宝珠は戻り、興福寺本尊に納められた、という筋。
本書の本文は刊本「舞の本」に同じ。挿絵では、海上での万戸将軍と阿修羅軍との戦闘場面は迫力があり、竜神を欺くために催された舞楽の場面もなかなかの見所である。そのほか、修羅の軍勢や竜神の眷属など、異類の者たちが怖ろしくもユーモラスな姿で描かれている。唐から日本へ、竜宮をも巻き込んだ壮大な物語にふさわしい、バラエティに富んだ絵画表現が楽しい「小絵」(小ぶりの絵巻物)である。