和洋古書善本特選目録第13号 和書の部(5)
いそざき 奈良絵巻
近世前期頃写 紙本金銀泥極彩色十図 桐函入 三軸 7,350,000円

紙高(上・下)各34.9糎、(中)35.5糎、長サ(上)8米96.9糎、(中)7米94.8糎、(下)4米32.8糎。
肉付面型の妬婦譚・出家遁世譚であるこの物語の伝本は、寛文七年刊の版本以外は多く奈良絵本の形で残っており、絵巻としてはこれまでにはデンバー美術館蔵の二軸が知られるのみである。本文は水辺の風景等の下絵のある料紙に漢字仮名交じりで書かれており、毎行20字前後。上巻四図・中巻三図・下巻三図の彩色絵が各巻首に集められているのは改装の際の所為かと思われるが、一紙の大きさ等から考えて、改装前の形態も巻子本であったと推測される。表紙は黄土色唐花文様、「いそざき上(中・下)」の如き題簽を貼る。見返しは金箔。
御伽草子「磯崎」は元来絵詞であった部分が本文に混入されたために文脈に乱れを生じている箇所があることが指摘されているが、本書は該当部分において本文に整合性を持たせるような改変が行われているように見受けられる。また、現存二系統の本文に比べてまとまった量の異文がかなり見られる(特に上巻末及び中巻)、中巻末・下巻始めの部分に他本と叙述の順序が入れ代わっている箇所があるなど、興味深い本文を有する。なお、物語の末尾にあたる部分を欠くが、一紙の中程で本文が終わっていることから、料紙の散逸等によるものではないことが知られる。奥書はない。保存状態は良好。

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