和洋古書善本特選目録第13号 和書の部(8)
はまぐり(異版) 奈良絵本
近世前期写 紙本極彩色九図 一帙二冊 3,150,000円

縦17.5糎、横23.8糎。柿色空押表紙。題簽には「はまぐり 上(下)」とある。
『蛤の草紙』として知られる御伽草子の一本。渋川版御伽草子二十三編にも含まれるなど、広く知られた物語である。母を養うために釣りをする孝子しじうが蛤を釣り上げると、その中から美しい女房が現れ、二人は夫婦になる。しじうが女房の織った布を売りに行くと、不思議な老人が金三千貫で買い取り、さらにしじうを屋敷に連れ帰り、長寿を保つ酒をふるまうなど歓待する。家に戻ったしじうに、女房は、自分が観音の使者であり、孝行をめでて夫婦になったことを語って天上するが、その後しじうは富貴の身となり、七千歳を保ち天上する。
『蛤の草紙』の本文は大きく分けて三つの系統が知られており、物語の筋も系統によって少しく異なる。本書は、刊本のうちでも渋川版とは系統を異にする明暦二年版・寛文版に近く、明暦版と寛文版で異同のある部分については、明暦版に近いことから、明暦版との密接な関係がうかがわれる。しかし、明暦版を忠実に書写したものというわけではなく、文言のレベルでは些細な異同が少なくない。明暦版が主人公の名前を「ちしう」とするのに対し、本書は「しじう」としている点も相違点のひとつである。他にも、若干ではあるが、明暦版にまったく見られない記述を含んでいることから、本書は明暦版に近い系統の本文をもとに、増補された本文であると考えられる。
挿絵は、上巻四図、下巻五図で、金泥などをふんだんに用いて描かれている。構図などは渋川版と一致するものが多いが、独自の場面選択を行っているものもある。保存状態も良好で剥落もほとんど見られない。。

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