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京都大学文学研究科蔵
琉球写本『人中畫』四巻 付『白姓』

木津祐子 編

A5判・上製・紙カバー装・カラー口絵4頁・800頁(うち影印608頁、翻刻164頁、解説24頁)
税込10,780円(本体9,800円+税)
 ISBN978-4-653-04027-9【2013年5月刊】


本書では、琉球の久米村通事が用いた通事書・琉球写本『人中畫』四巻付『白姓』(京都大学文学研究科蔵)を影印・翻刻し、解説を付して刊行する。現在では失われた原刊本の面目を伝える大きな資料的価値を有するとともに、近世の琉球における官話学習のシステムと特徴を探るうえで重要な資料。

■『人中畫』とは 明末清初に成立したと考えられる短篇の白話話本小説集で、「風流配」「自作孽」「狭路逢」「終有報」「寒徹骨」の五篇から成る。内容は中国の典型的な才子佳人小説。繁本と簡本(繁本のダイジェスト版)の二系統があり、繁本は、現存が確認できるのは嘯花軒刊本(現中華書局資料室蔵)一本のみという稀覯本である。

■琉球写本『人中畫』とは 琉球の久米村通事(通事とは、16世紀後半~19世紀にかけて、対中国貿易及び外交政策上、大きな職責を担った中国語通訳専門職。久米村通事は、移民華人をルーツにもつ)が、官話(明清期中国の口頭語としての共通言語)を学習する際の教材として、中国刊本の白話文体を官話文体に翻訳したもので、清末まで長く用いられた。現存する繁本では失われている「寒徹骨」の結末を、原刊本により近い形で伝えるテキストとして、大きな資料的価値を有する。

■ 『白姓』(『白姓官話』ともいう)は、琉球で難船漂着事件(※)が起こった際の難民と久米村通事とのやりとりをもとに作成された官話教材。久米村の鄭通事が、難民に何らかの書物に点を打つこと(もしくは点検)を依頼したことなどが会話からうかがえる。 (※乾隆14(1749)年、琉球の大島に江蘇船籍の商船が漂着。乗船していた難民は翌年4月に那覇に護送され、泊の難民施設に収容、同年12月に進貢船に同乗して福州に送還。『白姓』はこの八ヶ月間に難民と久米村士人が交わした会話にもとづいて作られた。)

■京大本の特長 「風流配」「自作孽」「終有報」「寒徹骨」『白姓』を一帙に収める(「狭路逢」は欠)。すべて同筆で書写され、同一の印記を有する、出処が確かなテキストである。 『白姓』は、琉球の久米村通事編纂の官話教材のなかでも、序文を有し、成立年代が明らかな唯一の通事書。ほかに国内所蔵は6点確認できるが、とりわけ京大本は序文も含め完全なテキストで、筆跡も流麗な良質の写本である。また、『人中畫』と『白姓』を同一帙内に収めた唯一の例であり、両者の成立背景を探るうえで重要な特徴である。

●編者:木津祐子(きづ・ゆうこ) 京都大学大学院文学研究科教授

 

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