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現世の活動と来世の往生

実践仏教 Ⅱ

岸野亮示・ジャクリーン・I・ストーン著/中山慧輝訳
四六判・上製・紙カバー装・帯付 232頁・口絵1頁
本体2,700円+税

ISBN978-4-653-04572-4


シリーズ三回配本第Ⅱ巻は、過去世と現世をつなぐ行為を扱う第一章と、現世から来世に想いを託すための行為を主題とした第二章から成る。

<目次>
 はしがき (船山 徹)
第一章 律に説かれる宗教活動――インドにおける「行像」―― (岸野亮示)
 はじめに
  一 インド仏教をなぜ研究するのか
  二 インド仏教をいかに研究するのか
  三 「律(Skt. vinaya)」というテキスト
 第一節 「根本説一切有部律」とは
  一 まとまった形で現存する六つの律文献
  二 「根本説一切有部律」の特徴
 第二節 「行像」とは
  一 「中国レンズ」と「仏像」について
  二 日本や中国における「行像」
  三 旅行記に見られる西域・インドにおける行像
 第三節 「根本説一切有部律」に説かれる「行像」
  一 『ニダーナ』と『ムクタカ』というテキスト
  二 『ニダーナ』に見られる「行像」に関する規定
  三 『ムクタカ』に見られる「行像」に関する規定
 第四節 いつ「行像」は開催されたのか
 おわりに
 参考文献
第二章 往生の秘訣――平安日本の臨終行儀―― (ジャクリーン・I・ストーン、中山慧輝訳)
 はじめに
 第一節 密教儀礼と浄土の願い――問題とならない二つの融合
 第二節 密教的臨終の姿勢
 第三節 密教的な臨終行儀のやり方
 第四節 実範――真言行者にとっての臨終行儀
 第五節 覚鑁――密教儀礼としての臨終行儀
 第六節 二重の論理
 第七節 少数派の見解
 結 語
 注
 参考文献
 語彙解説
 図版一覧 / 索 引



編者「はしがき」より

 シリーズ実践仏教第二巻『現世の活動と来世の往生』は、地域と時代の異なる二つの概説を収める。

 第一章「律(りつ)に説かれる宗教活動──インドにおける「行像(ぎょうぞう)」」の執筆者、岸野亮示氏は「律」の専門家である。「律」とは、仏教の出家者たちが教団の中で平穏な共同生活を送るために定めた生活規則をいう。しかし氏の取り上げる主題は「律」そのものでなく、インドの「律」に記される一つの行事である。それがインドから中国へ仏教が伝わった時に変容を遂げたことの意味を論じる。
 その行事とは、「行像」という、仏像を輿に載せて街中を回る御練(おね)りである。岸野氏はその発端を記す資料として「律」のある記述に注目する。中央アジア地方と中国では、およそ紀元後三〜四世紀から「行像」が盛んに行われた記録が残っている。だがそれはインドの「律」に書かれている内容と著しく異なると岸野氏は指摘する。インドの「律」が本国の古い伝承を含む一方で、中央アジアや中国の伝承は周辺地域の新しい伝承である。行像の仕方についてインドと東方地域になぜ違いが生まれたか、行像の元来の姿はどのようで、何のために行ったかについて、氏は謎解きをして見せるかのように鮮やかに解説する。
 律は、経・論と並ぶ三蔵(さんぞう)に含まれる基本文献である。しかし他の書物に現れない特殊な言葉や言い回しがあるため、研究者にとってもかなりの専門知識を要する難物である。そこで氏は、主題の行像を扱うに先立って、そもそも「律」とは何かという初歩から説き起こす。この意味で本章は「律」の優れた入門書でもある。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で学んだ氏は、「律」を“古い”テキストでなく、これからも新たな解釈の可能性と情報を含む歴史資料と捉える。読者は、随処に慎重かつ斬新な見方を感じるに違いない。

 第二章「往生の秘訣──平安日本の臨終行儀」は、実践の諸相を別の角度から照らし出す。著者のジャクリーン・I・ストーン氏は、アメリカのプリンストン大学名誉教授である。本章の英文原論文 “The Secret Art of Dying: Esoteric Deathbed Practices in Heian Japan” は、自身の編集した次の単行本に収録される。『仏教における死──実践・論議・表象』(The Buddhist Dead: Practices, Discourses, Representations, edited by Bryan J. Cuevas & Jacqueline I. Stone, Kuroda Institute Studies in East Asian Buddhism No.20, Honolulu: University of Hawai'i Press, 2007)。
 わたくしは本巻に日本中世の往生願望や臨終を扱う概説を入れたいと思い、最初、日本語で書かれた論著から執筆者を探そうとしたが不首尾に終わった。わたくしの知識不足とは別に、探しにくい理由もあると思った。現在の日本で行われている日本仏教史学は、多かれ少なかれ宗派の枠に収まるか、某某体制論といった史的研究か、国家との関係や寺院経済の研究が多いのである。思想史を真正面から扱う研究はむしろ国外に多い。仏教の研究は国際的である。インド仏教はインド以外に研究者が多い。日本仏教もアメリカやヨーロッパの研究から学ぶべき事柄が多い。ストーン論文を中山慧輝氏の和訳で紹介できることは、編者の喜びである。なお、ストーン氏の研究は質量ともに夥しく、臨終という主題に限っても本章を上回る次の大著がある。『今わの際の正しき思い──日本中世の仏教と臨終行儀』(Jacqueline I. Stone, Right Thoughts at the Last Moment: Buddhism and Deathbed Practices in Early Medieval Japan, Kuroda Institude Studies in East Asian Buddhism No.26, Honolulu: University of Hawai'i Press, 2016)。ただしシリーズ実践仏教の全体的バランスを考慮して、本巻には敢えて簡略版の訳を収める。

 第一章は、インドにおける行像の発端として、過去世に修行を積んだ成果として現世でゴータマ・シッダールタがブッダとなれたという、過去世と現世のつながりを扱う。第二章は、修行者が現世を去りゆく瞬間にいかなる行為で来世に想いを託すかという、現世から来世への往生を主題として取り上げる。これら二章を収める本巻を『現世の活動と来世の往生』と題する所以である。                  

●著者/訳者
岸野亮示(きしの りょうじ)
京都薬科大学一般分野講師。専攻は仏教学
ジャクリーン・I・ストーン
プリンストン大学宗教学部名誉教授。専攻は日本仏教
中山慧輝(なかやま けいき)
京都大学文学研究科博士課程。専攻はインド仏教

「シリーズ実践仏教」全巻紹介ページ

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e-mail: kyoto@rinsen.com