戦後日本を読みかえる 全6巻

坪井秀人編
四六判・上製・紙カバー装・帯付・平均270頁
各巻予価3,200円+税

―本当に〈戦後〉は終わったのか?
 人文学の叡智を結集し、いま問い直す。―

◆ 編者のことば ◆

 〈戦後〉は日本の内から外から、しかもそれぞれまったく違う力学のもとでその終末を迎えようとしているのかもしれない。しかし、このような現在だからこそ、〈戦後〉とはどのような時代だったのかを徹底的に検証し、考え直す時なのではないだろうか。〈戦後〉という時間に殉じるがごとく、(皮肉なことに)衰弱の途を取らされ続けている人文学の知をここに集めて、臆することなく真っ向から〈戦後〉を読みかえることに挑んでみたい。
 本叢書『戦後日本を読みかえる』が目指すのは、保守主義を中心に唱えられてきた〈戦後〉に対する挑戦に対峙し、〈挑戦〉する権利を私たちの側に奪い返すことである。安易に〈戦後〉が総決算され、そこから脱却されることに抗し、本当の意味で〈戦後〉を終わらせるための作業に就くこと。本叢書の評価はその作業に対する評価によって決しられるはずである。

《各巻タイトルとキーワード》

第1巻 敗戦と占領

……戦中戦後の連続/断続性、占領、基地、検閲、闇の文化、アメリカの影(親米/反米)

第2巻 運動の時代

……サークル運動、文化工作、組合、市民運動、学生運動、冷戦体制、運動媒体としてのメディア

第3巻 高度経済成長の時代

……歴史的転換としての高度経済成長期、公共性と大衆性、政治(反戦、反基地)と反政治、公害、万博、 ドキュメンタリー、記憶と記録

第4巻 ジェンダーと生政治

……生権力、福祉社会、医療・介護と女性、高齢化社会、自殺、鬱、身体論、リブ、フェミニズム、クイア

第5巻 東アジアの中の戦後日本


……旧満洲、引揚げ、朝鮮戦争、台湾、沖縄、在日、日中友好の歴史的評価、ポスト植民地主義、 アートアクティヴィズムとアジア

第6巻 バブルと失われた20年

……バブルとポストバブル、失われた20年(10年)、曲がり角の人文学知、環境問題と食文化


内容見本(PDF)

 

●シリーズ刊行に寄せて●

「戦後日本を読みかえる」を推薦する
日本大学文理学部教授  紅野謙介

 日本の敗戦から七三年が経った。明治国家の成立から数えてみれば、七三年目は一九四一年、ちょうど日中戦争から太平洋戦争に拡大した年に当たる。この長い期間を、私たちは「戦後」という名でひとくくりにしてきた。しかし、「戦後」の時間のなかに性やジェンダーの葛藤と変化があり、階級や地域、民族を分断する闘争があり、国際政治が折り込まれてきた。その亀裂と断層を追うことは、私たちが真の「戦後」の岸辺にたどりつくための手立てでもある。この叢書はそうした旅に欠かせないガイドブックとなるはずである。


「戦後」の歴史化への期待
日本女子大学人間社会学部教授  成田龍一

 「戦後」の考察は、これまで、もっぱら同時代史としてなされてきた。戦後は、現在進行形のもと、未来へ向かう過程として扱われてきた。しかし、いまや戦後生まれが世代を重ね、戦後がノスタルジーの対象とすらなっている。
 このとき、「戦後日本を読みかえる」の営みは、戦後の再文脈化であり、歴史化にほかならない。この試みこそが、〈いま〉をあきらかにするために必要な営みだ。国籍や性別、専門を異にする四〇人が集う壮大な営みに、心が躍る。



ミネルヴァの梟たちのために
京都精華大学人文学部専任講師  白井 聡

 「戦後」は確実に終わろうとしている。いや、もうすでに終わったのかもしれない。「平和と繁栄」は、すでに彼方の物語となってしまった。しかし、である。にもかかわらず、私たちは「現在」をとらえる言葉=概念をいまだ手にしていない。このことが、出口の見えない閉塞感・不全感を蔓延させている。
 そんな時代に求められるのは、過ぎ去りつつあるものが何であったかを、底の底まで見透かす言説だ。その認識の力が、私たちが一時代を能動的に終わらせ、新しい「現在」を創造するための活力となる。本シリーズは、私たちにミネルヴァの梟として飛び立つ資格を与えてくれるだろう。

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