真福寺善本叢刊 〈第三期〉神道篇 全4巻

≪2021年7月全巻完結!≫ 【呈内容見本】

名古屋大学人類文化遺産テクスト学研究センター監修
岡田莊司・伊藤 聡・阿部泰郎・大東敬明編
菊判・上製・布クロス装・函入・各巻平均500頁
全4冊揃 税込112,200円(本体102,000円+税)
 ISBN978-4-653-04470-3(セット)

 真福寺(大須観音)は、仏教典籍と共に、鎌倉・南北朝時代に書写された数多くの中世神道資料が所蔵されており、研究上比類ない価値を持つ。先の『真福寺善本叢刊』以降に発見された写本をはじめとして構成される本叢刊は、中世神道研究のみならず、日本中世の宗教思想・信仰文化の解明にとって多大な貢献をなすものと期待される。

【各巻内容】  収録内容は変更の可能性があります
第1巻 神道古典 (編=岡田莊司)
<第2回配本> 2019年8月刊行、税込26,400円(本体24,000円+税)
太神宮諸雑事記/諸道勘文〔長寛勘文〕/神祇講私記/御遷宮宮餝行事/天都宮事太祝詞/天津祝詞

第2巻 麗気記(編=伊藤 聡)
<第1回配本> 2019年3月刊行、税込26,400円(本体24,000円+税)
麗気記〔正本〕/神体図/麗気記〔副本〕/釼図/宝釼図注/法釼図聞書/麗気血脈/麗気制作抄

第3巻 御流神道(編=伊藤 聡)
<第3回配本> 税込28,600円(本体26,000円+税)
神祇灌頂大事/神道遷宮次第
大師/神祇秘記/御流神道父母代灌頂/御流神道灌頂内堂義式/神道灌頂指図/神道印信類

第4巻 中世神道資料集(編=阿部泰郎、大東敬明)
<第4回配本> 税込30,800円(本体28,000円+税)
神一徳義抄/諸大事/〔参考〕『諸大事』(抄)西田長男旧蔵/太神宮本地/神道集

<編集委員> 所属は2019年8月現在
岡田 莊司    國學院大学神道文化学部名誉教授
伊藤 聡     茨城大学人文社会科学部教授
阿部 泰郎   龍谷大学教授、名古屋大学高等研究院客員教授
大東 敬明    國學院大学研究開発推進機構准教授
<その他執筆者>
木村大樹     國學院大学研究開発推進機構PD研究員
塩川哲朗     國學院大学兼任講師
鈴木 英之    北海学園大学人文学部准教授
原 克昭     弘前大学人文社会科学部准教授
ラポー・ガエタン 名古屋大学人類文化遺産テクスト学研究センター特任准教授


内容見本(PDF)


編者のことば   編集委員 岡田莊司・伊藤 聡・阿部泰郎・大東敬明

 名古屋市中区にある北野山真福寺宝生院(大須観音)は、日本中世の貴重な聖教・典籍を伝える一大宝庫である。ここには仏教典籍と共に、鎌倉・南北朝時代に書写された数多くの中世神道資料が所蔵されており、研究上比類ない価値を持つ。その精華は、『真福寺善本叢刊』 において、 『両部神道集』 (一九九九年)、 『中世日本紀集』(二〇〇〇年)、『類聚神祇本源』(二〇〇四年)、『伊勢神道集』(二〇〇五年)として順次刊行された。しかし真福寺には、まだまだ幾多の重要な資料が残されている。そしてこのたび、それらを精選した『真福寺善本叢刊 神道篇』として、前回と同様に臨川書店から刊行するはこびとなった。本叢刊は全四巻で構成され、『太神宮諸雑事記』や『諸道勘文〔長寛勘文〕』など中世神道の古典的著作の鎌倉時代写本(第一巻)、両部神道の中心典籍『麗気記』の最古写本とその関連資料(第二巻)、両部神道の主要流派である御流神道の典籍・印信(第三巻)、真福寺第四世政祝が編纂した『諸大事』や、『神道集』の古写本等などの重要典籍等(第四巻)が収められる。今回の刊行により、先の『真福寺善本叢刊』所収書と併せて、真福寺神道聖教の全貌を知ることができよう。このことは中世神道研究のみならず、日本中世の宗教思想・信仰文化の解明にとって多大な貢献をなすに違いない。

 

大須文庫探査における神道書の意義――監修のことばにかえて――
  名古屋大学人類文化遺産テクスト学研究センター 初代センター長 阿部泰郎

 真福寺において、初代能信をはじめとする歴代が十四世紀にかけて形成した聖教古典籍の集積は、近世に全国有数の経蔵として尾張藩寺社奉行の保護するところとなり、近代には東京帝国大学の黒板勝美博士が大槻快尊住職と共に整理を行い目録を作成し、保存に貢献した。平成に至り、国文学研究資料館と名古屋大学により、新たな悉皆調査が開始され、目下、断簡を含む総合的なアーカイヴス化を、人文学研究科附属人類文化遺産テクスト学研究センター(CHT)において進めているところである。これまでの成果は、『真福寺善本叢刊』第一期(一九九八~二〇〇〇)第二期(二〇〇三~一一)『中世禅籍叢刊』(二〇一三~一八)が臨川書店によって相次いで公刊され、調査を通じて見いだされた貴重な宗教文献の影印・翻刻・解説を通じて、その成果を仏教学、宗教史、思想史、歴史学、文学等の諸領域の学界に提供してきた。断簡から復原された新発見の稀覯書を含めて、大きなインパクトを人文学に与えることになった。これらの成果は、調査の過程で設立されたCHTを拠点とする、領域分野を横断した国際的な連携と共同による研究活動の賜物であり、継続して採択された日本学術振興会の科学研究費、現在進行中の基盤研究(S)「宗教テクスト遺産の探査と総合的研究」の中核的な所産でもある。その、あらたな報告として、既に『善本叢刊』に四巻にわたり掲載された文献の他になお数多く伝存する神道書を、網羅して収録することになった。これは、単なる補完でなく、現在まで継続する調査研究の最新の成果を結実させた、あらたな体系的紹介である。真福寺に集積された神祇関係文献は、「麗気記」など儀海から宥恵への密教法流伝授に伴い書写された聖教の一部、「太神宮諸雑事記」もその一環を成すと思しい伊勢神道書や古事記と共に信瑜が東大寺東南院からもたらした文献群、そして四世政祝が諸流の印信血脈を集成するのに伴う切紙類聚としての「諸大事」など、それぞれ文庫の形成に重要な役割を負ったであろう重書が、このたびの『善本叢刊』神道篇の要を成している。この第三期「神道篇」が開示するところの中世宗教テクストの世界は、やがて更に持続するであろう調査と研究とによって真福寺聖教の包蔵する驚くべき深さを窺う導きとなるであろう。またそれは、真福寺を介して日本各地に伝存するこうした宗教文献の総体が、稀有な世界的宗教文化遺産であることを明かす、こよない証なのである。

 

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