京大人文研東方学叢書 
 第一期 全10巻

四六判・上製・紙カバー装・帯付・平均250頁
各巻予価3,000円+税

京都学派の伝統がひらく 深淵な東洋学の世界

京都大学人文科学研究所東方部は、東方学、とりわけ中国学研究に長い歴史と伝統を有し、世界に冠たる研究所として国内外に知られている。約三十名にのぼる所員は、東アジアの歴史、文学、思想に関して多くの業績を出している。その研究成果を一般にわかりやすく還元することを目して、このたび「京大人文研東方学叢書」をここに刊行する。

* 毎年2冊配本/タイトル・内容・配本順は一部変更になる場合がございます。

2016年配本―11月刊行―
1 韓国の世界遺産 宗廟 王位の正統性をめぐる歴史
 矢木 毅 著  本体 3,000円 +税
2 赤い星は如何にして昇ったか
           知られざる毛沢東の初期イメージ

 石川禎浩 著  本体 3,000円 +税

2017年配本―6月刊行―
3 雲岡石窟の考古学 遊牧国家の巨石仏をさぐる
 岡村秀典 著  本体 3,200円 +税

2018年配本―3月、6月刊行予定―
4 漢倭奴国王から日本国天皇へ 中国史家の視座から  冨谷 至 著
5 術数学の形成 中国の科学と占術 武田時昌 著

2019年配本―2月、5月刊行予定―
6 漢籍目録の魅力 「学術の史」としての目録学  古勝隆一 著
7 理論と批評 古典中国の文学思潮  永田知之 著
8 仏教の聖者 史実と願望の記録  船山 徹 著   

2020年配本―1月、7月刊行予定―
9 中国の仏教美術 仏の姿と人の営み  稲本泰生 著  
10 『紅楼夢』の世界 きめこまやかな人間描写  井波陵一 著  


 

●京大人文研東方学叢書 刊行にあたって●
京都大学人文科学研究所教授 冨谷 至

 京都大学人文科学研究所、通称「人文研」は、現在東方学研究部と人文学研究部の二部から成り立っている。前者の東方学研究部は、一九二九年、外務省のもとで中国文化研究の機関として発足した東方文化学院として始まり、東方文化研究所と改名した後、一九四九年に京都大学の附属研究所としての人文科学研究所東方部になり今日に至っている。
 第二次世界大戦をはさんでの九十年間、北白川のスパニッシュロマネスクの建物を拠点として東方部は、たゆまず着実に東方学の研究をすすめてきた。いうところの東方学とは、中国学(シノロジー)、つまり前近代中国の思想、文学、歴史、芸術、考古などであり、人文研を中心としたこの学問は、「京都の中国学」、「京都学派」と呼ばれてきたのである。今日では、中国のみならず、西アジア、朝鮮、インドなども研究対象として、総勢三十人の研究者を擁し、東方学の共同利用・共同研究拠点としての役割を果たしている。
 東方学研究部には、国の内外から多くの研究者が集まり共同研究と個人研究をすすめ、これまで数多くの研究成果を発表してきた。ZINBUNの名は、世界のシノロジストの知るところであり、本場中国・台湾の研究者が東方部にきて研究をおこなうということは、まさに人文研東方部が世界のトップクラスに位置することを物語っているのだ、と我々は自負している。
 夜郎自大という四字熟語がある。弱小の者が自己の客観的立場を知らず、尊大に威張っている意味だが、以上のべたことは、夜郎自大そのものではないかとの誹りを受けるかもしれない。そうではないことを証明するには、我々がどういった研究をおこない、その研究のレベルがいかほどのものかをひろく一般の方に知っていただき、納得してもらう必要がある。
 別に曲学阿世という熟語もある。この語の真の意味は、いい加減な小手先の学問で、世に迎合するということで、その逆は、きちんとした学問を身につけて自己の考えを述べることであるが、人文研の所員は毫も曲学阿世の徒にあらずして、正学をもって対処してきたこと、正学がいかに説得力をもっているのかも、我々は世にうったえて行かねばならない。
 かかる使命を果たすために、ここに「京大人文研東方学叢書」を刊行し、今日の京都学派の成果を一般に向けて公開することにしたい。



●「京大人文研東方学叢書 第一期」刊行に寄せて●

新鮮な知的体験
国際日本文化研究センター名誉教授 井波律子

 京都大学人文科学研究所の東方学研究部は、東方文化学院、東方文化研究所以来の歴史と伝統を受け継ぎ、九十年にわたって中国を中心とする東方学の研究をつづけてきた。総体として、その研究姿勢はあくまでもオーソドックスでありながら、これをきちんと踏まえて、個々の研究スタッフが主体的に研究対象と取り組むところにあると思われる。オーソドックスは正攻法ということであり、けっして古いということではない。この「京大人文研東方学叢書」は、こうした姿勢にもとづく研究成果を、古代から現代に至るまでの中国ひいては東アジアの思想、文学、歴史、芸術、考古学等々について、平明に説き明かしたものである。堂々たる正攻法を基礎に、さらなる飛翔をめざす「京都の中国学」のこうした試みは、必ず多くの読者に新鮮な知的体験をもたらすことであろう。


学問の直球勝負
東京大学東洋文化研究所教授  大木 康

 京都大学人文科学研究所と東京大学東洋文化研究所は、東西の文科系研究所として、双子の姉妹のような関係にある。われわれは人文研の学問を心から尊敬し、よき仲間であることをたいへん光栄に思っている。東方文化学院京都研究所にはじまる人文研東方部が、まもなく九十周年を迎えようとする今日、研究員諸氏の研究内容を広く江湖に問わんとする「京大人文研東方学叢書」が刊行されるという。まことにご同慶の至りである。冨谷至教授の「刊行にあたって」では、「人文研の所員は毫も曲学阿世の徒にあらずして、正学をもって対処してきた」と宣言される。人文研が常に学問に対してど真ん中直球勝負で臨んできたことをわれわれはよく知っている。この人文研精神が脈々と受け継がれている「東方学叢書」第一期の完成を心待ちにしたい。



アジア学への確かな導き
―京大人文研東方学叢書発刊を喜ぶ

日本中国学会理事長・早稲田大学教授 土田健次郎

 京大人文研のアジア学は、海外でも有名である。日本の人文学がとかく内弁慶になりがちなのとはわけがちがう。もちろん我々国内の研究者も、陸続と発信される研究成果からは限りない恩恵を受けてきた。人文研の成果には、研究員の個別的研究と共同研究によるものがある。その両者が相乗効果を生み、京都学派の輝かしい伝統を継承しながらも、新たな視界をも切り開き続けてきた。このたびその人文研東方部の第一線の研究者たちが、一般の読者に向けた叢書を刊行する。第一期のラインナップを見ただけでも魅力的なテーマが多く、心が躍る。人文研ならではの重厚着実な研究成果をふまえた刺激的なアジア学の世界が、しかるべき著者を得て、多くの読者の共有物になるわけである。アジア学を専攻する学生は言うに及ばず、アジアや日本に関心を持つ一般の読者に強く推薦したい。

臨川書店ホームページへ

e-mail: kyoto@rinsen.com